銀の小箱

児童文学・童話作家 かんのゆうこのブログ

地道なロングセラー。

 

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先日、「はりねずみのルーチカ」第1巻と第3巻が重版になったばかりでしたが、今度は第2巻と第4巻が同時重版になりました。

これで、第1巻が5刷、第2巻が3刷、第3巻が3刷、第4巻が2刷、そしてえほんのルーチカが2刷目となりました。読んで下さったみなさま、本当にありがとうございます。ちょうど今、来年発売予定の5巻を作っている最中なので、とても励みになり気持ちに弾みもつきました。

 重版のお知らせが来るたびに、私はなんだか信じられないような、とても不思議な気持ちに包まれます。

少し話はそれますが、絵本や童話を含む児童書の新刊は、毎日全国のさまざまな出版社から50~60冊ほど出版されていると言われています。(一週間でなんと350冊~420冊)

けれども多くの場合、書店の児童書コーナーのスペースは小さく、何十年も売れ続けているロングセラーやベストセラーの本もあるため、必然的に新刊のごくごく一部しか店頭には並びません。毎日出版されている部数を考えると、売れない本に割いている店頭スペースがないのは当然のことで、一週間ほど様子を見て その本が動かなければ(売れなければ)、より売れるほかの本にその場を譲らなければならなのです。

 私自身、今までに25冊ほどの本を出していますが、自分の著書に本屋さんで出会えることはそう多くありません。世の中には星の数ほど児童書があるのですから、それも当然のことです。

著者本人でもなかなか自分の本に巡り会えないというのに、そんな中、何かのご縁でルーチカに出会ってくださり、またそれだけでなくお家に連れて帰ってくださった方が いることを思うと(ネット通販で見つけてくださった方ももちろん含めて)なんだか信じられないほど幸運で不思議なことだといつも思うのです。


 二年ほど前、ルーチカの第一巻が初めて重版になったとき、講談社で私を一番最初に担当してくださった、とても尊敬している元担当編集者の方と食事をしました。私 は長い文章の童話を書き始めたばかりで、自分がこれから先もルーチカを書き続けられるのか小さな不安を抱えたままで、それでもこれからもずっとこの子たちと一緒に歩いていきたいと思っていました。


 たとえ私が原稿を書き上げられたとしても、シリーズものは売れなければ出版し続けることはできません。そういう意味でも早い時期に重版がかかってくれてほっとしたのですが、それと同時にこれからもちゃんと売れ続けてくれるのか不安ももちろんありました。

 

「第1巻は重版になってくれてほっとしましたけれど、ルーチカはどーんと動くタイプの本ではないと思うのでこれから先、どうなっていくのか・・・。」というようなことを私が言ったとき、元編集者のNさんが、「短い期間でどーんと売れる本だけがいい本とは限りませんよ。地道なロングセラーが、児童書の世界では最上級です。」と、言ってくださったのです。
 
 地道なロングセラーが、児童書の世界では最上級ーー
 
私はなんだか目の前がさぁっと開けたような気がしました。華々しい道は歩めないかもしれないけれど、地道なロングセラーだったら、ルーチカたちにも可能性があるかも知れない、そう思えたからです。


「なれるかなぁ・・・ルーチカが地道なロングセラーに・・・」私が言うと、「なれますよ、きっと!」いつもはそういうことを軽々しくは言わないNさんが、凛とした笑顔で言ってくださったのがとても印象的でした。

それ以来、この言葉はずっと胸の奥に息づいて、私を励まし続けてくれています。ルーチカを世に送り出してから、二年半の月日が経ちました。ただ目の前にあることだけを大切にしながらこの本を創ってきた私ですが、それでも少しずつ、Nさんの言って下さった「地道なロングセラー」にルーチカは近づいているのかな……そうであったらうれしいな……。ルーチカが重版になるたびに、私はあの日のNさんの言葉と凛とした笑顔を思出し、「がんばろう。」そう思うのです。

 

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